風の音にぞおどろかれぬる

2023.9.12   記入者:大岩(サービス管理責任者)

  

つかのまの涼しいときに散歩するご利用者のみなさん

 

「このあいだね、ご利用者Nさんが外出で水族館に行ってきたらしくて、帰ってきたNさんに『水族館どうだった?楽しかった?』ってきいたら笑顔で頷いたんだよね」

 

あるとき支援員Oさんとご利用者Nさんに関する情報共有をしているとき、こんなことがあってね、と、あるエピソードを教えてくれました。うんうん、と相づちをうちながらきいていると、こうつづきました。

 

「あぁ、きっと楽しめたんだろうなよかった、とおもって、Nさんに見てきたなかで何が一番よかったかきいたのね。そしたらNさん…おっきな声で一言…」

 

「?」

 

「『………水!!』って…(笑)」

 

「み、水!?

 

「わたしもおもわず驚いて『(水族館だし珍しい魚とかいっぱいいるのに~!)』とおもってNさんに聞き直してみたんだけど、やっぱり『水!』って教えてくれて。おもわず笑っちゃったけど、Nさんにとってはそうなんだなって。当たり前のように『どんな魚がいたかな?』って思っちゃったけど、そっかそうなんだって。でも、あまりにも目から鱗で…」

 

ついつい一元的な価値観や基準、ときには「ふつうはこうだよね」といったものの見方をしてしまうことがある日常のなかで、ときおりそうした固定概念に揺すぶりをかけられ、それゆえに心を打たれることがあります。Nさんにとっては優雅にすいすいと水槽のなかで泳ぐ魚よりも、たっぷりと敷き詰められた大きな水槽のなかの水そのもののほうがはるかに心を動かされたのかもしれないなとおもえたこのエピソードも、そのひとつでした。

 

こちらの手をそっとぎゅっと握るご利用者の手

 

ところで今年は残暑がきびしく、風のにおいは秋の気配を感じるものの、陽射しは肌につよく照りつけます。今夏は新型コロナウイルスとともにインフルエンザウイルスが拡大しているようですが、さいわい目黒恵風寮には落ちついた日々があります。

 

 

「秋来ぬと目にはさやかに見えねども」ではありませんが、たしかに季節は移ろいつつあり、それゆえに、かえってご利用者のみなさんの変わらない姿や表情に元気をもらえるような気がしました。

 

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