2023.9.28 記入者:大岩(サービス管理責任者)
「大岩さん、きょうのごはんなに?魚?」
ご利用者Hさんは顔を合わせるたび、ニコニコとしながら必ずその日のごはんの献立を尋ねます。こちらが覚えておらず「あれ、なんだっけな?」と答えても、わかるまで「なに?おしえてっ」と変わらない笑顔で尋ねてこられます。そのためその都度いっしょに献立表をみながら「どれどれ…あ、きょうはこれだ!」と確認をし、Hさんは「ふ~ん」と言いながらニコニコしながら去っていかれます。
たとえば人がものをたべるときには、歯だけではなく唇がおおきな役割を果たし、たべたものの固さや質感などは顎のうごきにあらわれるといいます。そのため、たべるときのしぐさに「ジッ…」と眼を凝らしてみると、ふだん見過ごしていることが見えてくることがあります。
また、口のなかの「唾液」は細菌の増殖をおさえながら消化を助けたり粘膜を保護するなど口のなかを清潔に保つやくわりをもち、加齢とともにその量が減ってくることがわかっています。そんなふうに年齢をかさねることで心身の機能低下が徐々にあきらかになるなかで、「なんだかいつもと様子が違うような…」といった小さな発見が日々のかたわらにひそんでいることがあります。
「あれ?いつもはパクパクとみずから進んで食事を召し上がっている方なのに、きょうはペースがいつもより遅いような…」
「あれ?食事介助をしていても、きょうはなんだか飲み込みが悪いような…」
ご利用者の食事の場面において、ときに支援員はそんな違和感を覚えることがあります。そうした「あれ?」をそのままにせずに気づきとして他スタッフや看護師とこまやかに情報共有することで、ときに病の早期発見につながることがしばしばあります。ご利用者の生活支援をおこなうわれわれにとって、ご利用者の健康を守るうえで「気づき」や「こまやかな情報共有」は大切なことのひとつでもあります。
また、目黒恵風寮では外部機関の歯科医師・言語聴覚士に依頼し、ご利用者の摂食・嚥下機能の評価をしていただく機会もつくっています。評価では、たとえば以下のようなコメントをいただきます。
・認知症の進行により、食物を認識しにくくなってきています。味の薄いものはため込みにつながりやすいため、味の濃いものや甘いものなど反応の良いものを間に挟みながら介助すると進みやすいかと思います。
・自ら飲み込もうとする動作が見られず、口に入った食べ物は重力で喉に送られている様子がありました。そのため、嚥下の反射と介助のタイミングが合いにくく、むせにつながっているようです。ゆっくり介助することで、誤嚥の回数を減らすことができると考えます。
こうした評価と介助における助言をもって、支援の見直しをおこないます。たべることひとつをとっても、支援者側の配慮や支援のしかたひとつで、そのひとの困りごとの解決や暮らしやすさにつながる場合があるのだと実感します。