2022.7.25 記入者:大岩(サービス管理責任者)
「これとこれ、きょうはどっちがいいかな?」(衣類を差しだし尋ねる支援員のKさん)
「!」(指を差し、こっち、と教えてくれるご利用者のHさん)
Hさんっていつもおしゃれな服装ですけどあれっていつも自分で選んでるんですかそれとも…という問いに対して、起きたあとにその日着るための服を選んでもらってるんですよ~、と教えてくれたのは支援員のKさんでした。
日々の暮らしで大切なこと、それは生活の三大要素といわれ、「衣食住」ということばで表されています。
殊に「衣」においては、からだを守る役割にとどまりません。かつて眼で眺めるだけのものだった紅や緑や紫はいつしか身に属するものとなり、こころの動きは装いの形としてあらわされ、人々は一段と美しくなりました。そうして身と衣類とは、その親しみを大きくしてきたといいます。
ファッションは誰でも楽しむことができ、そこに老若は問われません。
目黒恵風寮で暮らしているご利用者の中には、身にまとう衣類にいっそうの愛着やこだわりをもつ方がいらっしゃいます。そこにはその人の「これが好き」があり、装いから生まれた自信があり、安心があります。
──赤い服といったら、Sさん
──ポロシャツの重ね着といったら、OさんにSさん。
──サスペンダーといったら、KさんにAさん。
──ポケット付きのベストといえば、SさんにOさん。
ご利用者一人ひとりの着こなしやスタイルやシルエットは、言葉をつかわずに自分自身が何者かを伝える手段にさえなっています。
みずから着たいものを選び身支度をする方もいれば、スタッフと一緒に「きょうどれがいいかな~?」と選ぶことから一日がはじまる方もいます。
ふと目を向けると「衣」をとおした生活の味わいやあたりまえの日常がそこにはあり、それが知らず知らずのあいだに居心地のよさや豊かさにつながっている…そうおもうと、大切にしていきたいものの輪郭がまたひとつはっきりしたような、そんな気がしたのでした。