八重咲くごとく

2024.5.29 記入者:大岩(サービス管理責任者) 

 

五月は弥生文化の栽培植物であるイネの種まきの時期であり、六月にむかって火山列島に自生する紫陽花が花のつぼみをふくらませ咲かせる時期でもあります。目黒恵風寮に足をはこぶまでの道の脇には紫陽花が、あかるい藤鳩羽色や若紫の色をしてあざやかに彩りをあたえています。

 

そのなかにあって茎が折れ、アスファルトにこうべを垂れていた紫陽花をみつけたときには剪定し、ちょうど玄関にいらっしゃったご利用者Fさんに「紫陽花ですよ~!」とお見せするとクリリとした目で不思議そうに眺めて「きれいだねっ」と表情やわらかに応えてくれました。

 

「きれいだねっ」とご利用者Fさん

 

玄関に飾り、みなさんの往来を見守ります

 

玄関のそとでは、うとうとと木漏れ日のひとときのご利用者Sさん

 

ご利用者Sさんはうとうととしながら支援員Tさんとゆったり散歩へ

 

あぢさゐの 八重咲くごとく 八つ代にを
いませわが背子 見つつ思はむ

橘諸兄

 

季節のうつろいのなかで小さな変化は生まれ、それはときに気づきもたらしてくれます。そこから得たものは小さな変化もふくめ、スタッフ同士と、また毎月の嘱託医師による訪問診療(内科・精神科)のときにシェアし、ご家族や後見人の方には折をみて、口頭や個別のケース記録を毎月送付するなど、ご本人のようすの共有に努めています。

 

のびのび悠々にこやかに過ごされる方もいれば、不安定な気候もあってか「なんだか今日は調子がすこぶる悪そうだぞ…?」といった方、ふだんはぐっすりと眠っているけどこのごろはなんだか寝つきが悪いようすの方や、プリプリと怒号を飛ばしギラリと目つき険しく毛を逆立てているかのような方もいるいっぽう、さいきんは活気があり表情もよく笑って過ごされている方もいる──

 

お一人ひとりのようすは多少に異なれど、あれやこれやと日々ごたつけど、時をこえて胸を打つ「あぢさゐの八重咲くごとく…」という歌がしめすところの心の根は、ときどきふりかえり大切に持ちつづけていきたいなとおもいました。

あじさいが八重に咲くように
あなたにはいつまでもお元気ですこやかでいられますよう
この花をみるたびお祈りしています

 

余暇を過ごすご利用者Mさん

 

 

 

にこにこ過ごされるご利用者Mさん

 

パズルに熱中するご利用者Kさん

 

熱心に色を塗りこむご利用者Kさん

 

両手でぐにゅぐにゅと感覚遊びをするご利用者Iさん

 

「元気?かわいい?」とご利用者Tさん

 

声をかけると木琴を鳴らしてくれるご利用者Sさん

 

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