2023.6.17 記入者:大岩(サービス管理責任者)
紫陽花の陰からふと目が合うと、ボーダー柄の半袖から伸びた腕をずんずんと振り笑いながらご利用者Sさんは小走りに駆け寄ります。それからYさん、Mさん、Fさんとつづき、さあっと吹いた風がさらさらと木の葉を渡り、みなさん散歩から帰ってきました。声をかけるとSさんはいつものように大好きな飲み物のことを意気揚々とまぶたを一文字にしながら身ぶり手ぶりで伝えてくれ、Yさんは「大岩さん、午後から雨なんだって?うん。そうきいたよ?これから降る?どうなの?テレビでそう言ってたよ。大丈夫かな?…わたしどうしたらいい?」と急ぎ足で心配そうに話され、Mさんはニコニコとしながら「大岩さん!兄弟いるの?」と明るく尋ねられ、その横でFさんは口を閉じながらもウフフと照れくさそうに表情をうかべてらっしゃいました。
たとえば音に音階というものがあるように、まさしく人にも音階ともいうべき様相があって、一人ひとりをとおして「その人を聴く」ことができるようにおもえることがあります。それは言葉や目に見えているもの、触れているものだけでは決して捉えきれない側面があるからこそ、その人が聴こえてくるのかもしれません。声色や表情だけでなく、身に纏う空気感だったり身ぶり手ぶりの仕草、そうしたものから聴こえてくるご利用者やスタッフ一人ひとりの音は波のように飛沫をたて、しばしばその場を楽しくにぎやかにかたちづくります。
雨をまつ花鞠の姿のように、きょうもご利用者一人ひとりが沈黙と測りあえるほどにつよく美しく聴こえてくるのでした。