春風秋霜

2022.9.23 記入者:大岩(サービス管理責任者)

 

 

かつて台風は、秋草の野を吹き分けるものとして、その名を「野分(のわき・のわけ)」と呼んだそうです。古くは枕草子にも「野分のまたの日こそ、いみじうあわれにをかしけれ」(台風が過ぎ去りしあとは、しみじみと趣深い)といった記述がみられるなど、気象用語の「台風」が明治になり登場するまで親しまれていた語で、いまでも時候の挨拶として目上の方につかわれる「野分の砌(みぎり)」等はこの名残りのようです。

 

台風には、ごうごうどどうと吹く風で海をかきまぜて海水温のバランスをたもつ役割があるといいます。おなじくしてゴロゴロピシャンと鳴る雷は豊作をもたらし、稲やキノコがすくすくとよく育つそうです。ちがう立場から見てみると、台風ひとつとっても味わいのある現象として見え、じぶんの生きている世界の豊かさやおもしろさに気づくことができます。

 

そんなことを分け合うように「たくさん雷がおちるとキノコがいっぱい育つみたいですよ~」とご利用者に話すと「雷やだよ~こわい!」「へぇ~」「………」「キノコ!」「きょうのごはんなに?」「それより散歩行こっ」と、みなさん反応がそれぞれでした。 

 

 

季節の衣替えはすこしずつすすみ、ご利用者のみなさんが余暇を過ごされている朝のフロアからは「お茶とコーヒー、どっちが飲みたいですか~?」という支援員Kさんの生活の声がきこえてきます。

 

街にはハロウィンの装飾がすこしずつ増え、目黒恵風寮でも、日中活動でご利用者のみなさんが描いたり創った作品の飾りつけがはじまりました。先月入所されたご利用者Nさんも、支援員Sさんといっしょに玄関の装飾を楽しまれていました。

 

 

ガラス越しに笑顔のNさん

 

Nさんにはのんびりふわりとした温和な空気感があり、のどかにやさしい風が吹いているようでもあります。その人柄で、いまではすっかり目黒恵風寮の暮らしにも馴染まれつつあるようです。

 

「人に接するに春風駘蕩の如く、秋霜烈日をもって自らを粛む」

 

春の風のようにあたたかく穏やかな心で人には接し、 秋の霜のように厳しく自分を見つめる──Nさんの人柄に触れ、日々の生活のなかで忘れてしまわないよう、あらためてそう思うのでした。

 

前の記事

木隠れの星