2024.10.11 記入者:大岩(サービス管理責任者)
かつて江戸の人びとが百を超える茶と灰の色を「四十八茶百鼠」とあらわしたように、元来人間には微細なちがいを見わけるたいへんな眼力がそなわっているといいます。その力は色彩だけではなく、福祉の現場においてはご利用者の病・怪我の早期発見や心の機微など、ごくわずかな変化の兆候をかぎとるために発揮できるのではないかと引き寄せて考えることができます。
じっさい、「脈拍」「呼吸」「体温」「血圧」といった生命兆候とも呼ばれる基本の4項目のバイタルサインの測定など客観的根拠も下地としながら、日々のかたわらにいる支援員だからこそ感受できる病や怪我、異変の早期発見につながった例は枚挙にいとまがありません。
自分自身の状態やきもちをうまく伝えることが苦手な方やこちらの問いかけにはすべてオウム返しの方、発語がない方など、多様な方が暮らしているからこそ、言葉だけではなく表情やからだの動き、食欲や睡眠状態などの変化もよみとり、多職種による協働と連携をとおして必要な医療へ橋渡しすることが大切になります。
しかしたとえ身をもって語っているものがあったとしても、こちら側にそれを受けとめる素地がなければ、それは色を失います。じぶんの持っている力や可能性を引き出したり、その力や可能性の組み合わせを考えつづけていくことは、専門職として忘れてはならない道として常にひらかれています。
そうしたなかで、五感のひらめきともいえるような変化を察知する力、ときに糸のほつれほどのささいな変化をも掴みそのままにしないことが、ご利用者の暮らしの何気ない日常の下支えとなっているのかもしれません。