2026.3.3 記入者:大岩(サービス管理責任者)
「以前利用したことのある施設は、建物はとてもキレイでした。でも、なんというか…そこでの利用がトラウマになってしまって、それからしばらく入所施設からは遠ざかっていたんです。恵風寮は、たしかに建物は古いですが、雰囲気というか空気が温かいというか、人間味があるなと感じました」
先日見学した方よりそんなお言葉をいただき、それからしばらくして、あたたかさと冷えこみがかわりばんこでおとずれはじめました。事業所前の庭ではムスカリやチューリップの新芽が土からぴょこりと顔をだし、あんずの木が「早春」の象徴であるとおり今年もひとあしさきに花を咲きほこらせ、こどもたちがにぎやかに駆けまわっています。


いっぽう三寒四温に春眠あかつきを覚えず、冬でも春でもないような季節の余白にはどこかここちよさすらあり、すこしそわそわとする方もいれば普段よりも眠たげなようすの方もいます。
おもわずつられそうになるOさんの大あくび。ごはんのあとで一休みするうちにうたた寝するYさん。口のまわりに拭き切れなかった歯磨き粉をつけながらはにかむTさん。標準装備の寝ぐせをねじねじといじるYさん。声をかけると「どうも~」と淡泊だけどかならず手のひらをパッとして応えてくれるHさん。
ときにその無防備さや無邪気さ、「〇〇さんらしいよね」と笑い合えるような姿には、日々の愛おしさやなごやかさがにじんでいます。



フロアでは、ふと車いすのご利用者のズボンがめくれ膝がでているのを目にし、そっとかがんで裾をさりげなく直す新任職員Yさん。その人の尊厳をまもる心くばり、寒さへの想像力、人目につかないところでの配慮とさりげない所作は、春の寒さにも希望があることを告げてくれているようでした。
「桃李もの言わざれども下自ずから蹊を成す」(史記)とあるように、雄弁に語らずとも心にしずかに伝わってくるものが道をつくるように、ご利用者やスタッフ一人ひとりの雰囲気や人柄が、しらずしらず暮らす場の空気感やここちよさをつくりあたためてくれているのかもしれません。


