2025.9.30 記入者:大岩(サービス管理責任者)

「大丈夫?」と尋ねられ、思いとはうらはらに「大丈夫…」と答えた経験はだれしも多少なりともあるかとおもいます。
たとえば児童分野、とくに発達段階にある子どもや配慮が必要な子どもに対しては、「大丈夫?」と聞くと、実際には大丈夫ではなくても「大丈夫」と答えてしまうことが多くあります。これは、子どもが
- 相手を安心させたい
- 迷惑をかけたくない
- どう表現していいか分からない
- 「大丈夫」という答え方を習慣的に身につけている
といった背景があるためといわれ、そのため児童分野では、次のような配慮が必要になります。
- 選択肢を示して聞く:「痛い? それとも少し気持ち悪い?」など具体的に
- 行動や表情を観察する:言葉だけでなく仕草や表情からも状態を読み取る
- 安心して答えられる環境をつくる:否定されない、叱られない安心感があると本音が出やすい
- 「大丈夫?」ではなく状況を確認する聞き方:「どんなふうに感じている?」や「ここは痛い?」など
つまり「大丈夫?」という問いかけは、尋ねやすい反面、子どもにとってのほんとうの気持ちを引き出しにくいため、具体的で安心感をもってもらえる聞き方が大切だとされています。



目黒恵風寮においても、実際に大丈夫ではなくても「大丈夫」だったり、こちらの言った言葉を反復するかたちで応答する方がめずらしくありません。ただ、障害分野においては児童分野とおなじ背景の場合だけではありません。自閉スペクトラム症(ASD)におけるエコラリア(反復的な言葉の使用)の場合だと、言葉を学ぶ定型発達の子どもの「オウム返し」とはちがい、自己刺激や不安・安心感を得るためだったり「こだわり」といった特性からおこなわれる行動があります。
また知的障害をともなう自閉スペクトラム症の場合だと、言語発達の遅れや定型発達の子どもとは異なる文脈での「大丈夫?」「大丈夫!」「痛い?」「痛い!」など反復語がつかわれることがあり、個別のケースにあわせた理解と支援が必要となります。

と、立ち止まったときにはたいそう立派にすらすらと雄弁に語れはするものの、今日もあたりまえのように「大丈夫?」「大丈夫」というやりとりをしてしまい、すぐにハッと我に返り反省するのでした。
