風の吹くところ

2022.7.29 記入者:大岩(サービス管理責任者)

 

 

「部屋のドアをあけたらすぐ目の前に草原があればいいのになぁ、っておもうんですよね~」

 

そしたらたとえばご利用者が落ちつかず大きな声をだしても誰もなにも気にならないし…と支援員のNさんは言い、支援員のMさんも「わかる!」と続け、筆者も「モンゴルの原っぱみたいにひらけた場所ならおもいっきり走ったり何をしてても風に吹かれて気持ちいいですよね~」と笑いながら一緒に想像をふくらませます。

 

ちかごろ調子がすぐれないご利用者について、しばしば激しい行動など対応困難なことがあることを挙げながらも支援員のMさんは「でも、そんな本人がきっといま一番つらいよね」と自然と口をつき、うんうんと皆で共有しながら、草原の話につながりました。

 

だれでも、ほんとうに辛いときほどうまく言葉にできません。そういうときこそ、なにを言っているかではなく、なぜ言っているかを考えるほうが大切になったりします。「本人がいま一番つらいよね」と話す支援員Mさんの言葉のさきにはご利用者への寄り添いがあり、そのエッセンスが滲んでいるように感じました。

 

 

とはいえ、部屋のドアをあけた先に草原をとはいきません。どこでもドアがあるわけでもありません。けれども夢や理想を忘れずに想像をふくらませつつ、しっかりと地に足をつけて現実に照らしながら、いまある自分たちの身のまわりの素材でなにができるだろうかと常に模索することが求められます。

 

そう考えたとき、他にはない素材のひとつとして、草原はなくとも目黒恵風寮には風のガーデンがあると気づきます。

 

調子がすぐれない方、コロナ禍でどこにも行きがたいけどちょっぴり気分転換をしたい方、散歩のついでに寄る方、お外でのランチをしたい方…ほんのすこしずつではあるものの、スタッフがご利用者のニーズに合わせて活用しています。

 

そして、そんな場所を一緒につくりあげてくださる地域の方々もいます。

 

 

 

コロナ禍のいまも、毎週2回の頻度でボランティア活動として風のガーデンを一緒に具体的なかたちにしてくださっている近隣に暮らす方々や、「もう売り物にはならないけれどもまだまだ立派に咲くし処分するにはかわいそうなので、よかったら…」と花の苗を寄贈してくださる地域のお花屋さんがあるからこそ、いまの風のガーデンがあります。

 

だれでも行きたくなる場所づくりは、細々と地道に、こうしてつづいています。