手が伝えるもの

 

2022.6.6 記入者:大岩(サービス管理責任者)

 

 

鋏をつかい、布の端からほつれる糸を丁寧に切りとるご利用者のUさん。場所は、目黒恵風寮のすぐ向かいにある作業棟の2階「染色和紙班」です。

 

かたわらに覗く織機と織物はUさんが日中活動のときにつかっているもので、だれに言われるともなく、Uさんのペースで好きなときに好きなように織っています。支援員のSさんは、そんなUさんの歩調を尊重し、のびのびゆったりと快く活動ができるよう道具などを揃え環境をととのえて見守っています。Uさんはチョキチョキと黙々とひたすらに手をうごかし、こちらが声をかけてもチラッと一瞥し、ふたたび視線を落として手元の作業にとりかかります。

 

 

その姿はまさしく職人のそれにちかいように見えました。かつて染色家の志村ふくみが石牟礼道子との対談のなかで「手こそが物を考えて、物を言う。手が先に動くんです。手が魂を伝えるんです」と言った言葉がまさしく現実にありありとたしかな存在感をともない目前にあらわれているような、そんな姿にすら感じました。

 

ジョリジョリをして笑みをこぼす姿とはまた違う側面をみせてくれたUさんでした。

 

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